RESEARCH

 東北大学病院内部障害リハビリテーション科では、幅広いテーマのリハビリテーション医学に関する研究を行っております。大学院生の職種は医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、健康運動指導士など多種多様であり、留学生の数も多く、多角的な視点から学べる研究室となっております。共同研究は、東北大学病院の他の診療科はもちろん、他の大学病院や専門病院、関連企業と連携しております。

臨床研究

  1. 心臓リハビリテーション

     心臓リハビリテーションは、心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化や心不全病態の進行を抑制あるいは軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現することを目指します。本邦では2000年から日本心臓リハビリテーション学会による心臓リハビリテーション指導士認定が開始され、2006年に疾患別リハビリテーションとして大血管疾患リハビリテーション料が保険診療において算定可となり、現在では心臓リハビリテーションは広く周知されています。
     当教室では、心臓リハビリテーションの効果の検討や心疾患患者の身体機能ならびにQOL(Quality of Life)の評価を行ってきました。心臓再同期療法装置(CRT-D)や植込み型除細動器心不全患者における身体活動量と入院率との関連(Yanagi H, J Rehabil Med, 2020)、高齢心臓外科手術患者のせん妄とフレイルならびに軽度認知障害との関連(Itagaki A, J Cardiol, 2020)、左室補助人工心臓(LVAD)患者のQOL調査(Suzuki F, Tohoku J Exp Med, 2022)など研究・発表を行っております。
     当教室に入局した際には心臓リハビリテーション指導士取得も可能です。

    心臓リハビリテーション
  2. 呼吸リハビリテーション

     呼吸リハビリテーションは、呼吸器疾患患者における疾病の進行予防・管理を行い、患者のADLとQOLを向上させ、社会活動の維持を目指します。排痰法や呼吸法、ADL訓練、在宅酸素療法指導などを行い、特にセルフマネジメント教育を重視しています。本邦では2006年に保険診療において疾患別リハビリテーションとして呼吸器リハビリテーション料が新設されました。
     当教室では、COPDや間質性肺炎患者を中心に入院での包括的呼吸リハビリテーション診療をしております。そのような慢性呼吸器疾患患者の運動耐容能、嚥下機能、咳反射に関する研究・発表を行っております。
     当院は東北・北海道では唯一の肺移植実施施設となっていることもあり、肺移植患者さんが多くいらっしゃいます。そこで肺移植患者の身体機能や日常生活動作(ADL)、QOLについて研究をしております。
     近年ではCOVID-19感染症患者に対する報告も行っております。

    呼吸リハビリテーション
  3. 腎臓リハビリテーション

     日本腎臓リハビリテーション学会ガイドラインにおいて、保存期慢性腎臓病(CKD)患者や透析患者への運動療法は推奨または提案されています。本邦ではCKD患者の高齢化とともにサルコペニアやフレイルの合併例が増加しており、運動療法の重要性が増しています。
     当教室では、腎臓リハビリテーションの効果を明らかにすべく、急性心筋梗塞患者後患者の身体活動量と腎機能との関連(Sato T, J Cardiol, 2021)、透析患者への電気刺激療法効果の検討(Homma M, J Clin Med, 2022)など研究・発表を行っております。
     当教室、腎臓リハビリテーション学会、サスメド株式会社と共同でCKD患者向けの運動療法用スマホアプリの開発に注力しており、製品化を目指してアプリの臨床研究を行っております。

  4. 肝臓リハビリテーション

     非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、運動療法を含めた生活習慣の改善は第一に行うべき治療方法です。
     NAFLD患者に対する包括的リハビリテーションの有効性を検討する研究を行っております。

  5. がんリハビリテーション

     がん患者では、がんの進行やその治療の過程で機能障害を生じることで、ADLとQOLの低下に至ってしまいます。当教室では各種がんの周術期、化学療法、放射線療法、緩和ケアに対するリハビリテーション診療を行っています。
     入院治療が長期化してADLが低下しやすい造血幹細胞移植患者において、運動療法の効果を身体機能や運動耐容能評価にて検討しています。

  6. 摂食嚥下障害リハビリテーション

     摂食嚥下障害の原因は、脳血管障害、頭頚部がん術後、薬剤性、心因性など様々ですが、近年サルコペニアに伴う摂食嚥下障害が問題となっており、その治療には嚥下リハビリテーションと栄養介入が必要です。
     サルコペニアと関連のある認知症,慢性呼吸器疾患,心不全など各種疾患と嚥下機能との関係(Yokota J, PLoS One, 2016)について研究を行っております。

    呼吸リハビリテーション
  7. 肥満リハビリテーション

     肥満症患者さんに肥満減量手術や膝・股関節症の術前減量のため、入院リハビリテーション治療を行っております。足腰への負担を少なくするために、水中トレッドミルを用いた有酸素運動を積極的に実施しております。また、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満心筋症などの合併症患者に対する減量入院を行う場合もあります。
     肥満患者における呼吸機能や身体機能、運動耐容能への減量効果の研究・報告を行っております(Takahashi T, Tohoku J Exp Med, 2017)。

  8. 介護

     介護関連の研究も行っております。小規模多機能型居宅介護において、公園清掃や商店街での買い物などの地域参加を促進することで要介護高齢者の参加や活動が増加しました(Baba Y, PLoS One, 2021)。

  9. 自律神経

     芳香療法や音楽療法、骨格筋電気刺激の自律神経への影響、心拍変動による嫌気性代謝閾値の決定など心拍変動解析装置を用いた研究を行っております。

  10. 動作解析

     三次元動作解析による動作分析の研究を行っております。末梢動脈疾患(PAD)患者に対する運動療法の効果や動作解析の研究・報告を行っております(Kakihana T, J Vasc Surgm 2017)。

    心臓リハビリテーション
  11. スポーツ医学

     競泳において、ストリームライン姿勢(水の抵抗が小さい流線型の姿勢)では、浮心と重心の距離が離れていると下半身が沈む方向にかかる力が大きくなり不利となります。ストリームライン姿勢時の体幹内臓器の頭側移動により浮心-重心間距離が減少することをMRI画像解析にて明らかにしました(Yoshida N, Sci Rep, 2020)。このスポーツ医学研究は泳力の向上に役立つと思われます。

  12. 遠隔医療

     Web会議ツールを用いたオンラインヨガと対面ヨガの運動強度の比較検討、CKD患者向けの運動療法用スマホアプリの開発など遠隔医療に関する研究を行っております。

基礎研究

 下記病態モデルに対する運動療法の効果の研究を行っております。

  • 食塩感受性高血圧モデルラット
  • 高血圧自然発症ラット
  • 5/6腎摘除慢性腎不全モデルラット
  • 多発性嚢胞腎モデルラット
  • 肥満モデルラット
  • 糖尿病モデルラット
  • 心筋梗塞モデルラット など
基礎研究